2013年06月14日

あの時。〜2001.9.26 @大阪ドーム

 オリックス・バファローズは、源流となった阪急・近鉄という球団の歴史をリスペクトし、そのアイデンティティを今に伝えようと、レギュラーシーズンの数試合で 「レジェンド・オブ・Bs」 という特別な試合を設定しています。今年は、「Miracle!夢が叶ったあの時」 というテーマです。

 今週末の土曜・日曜は、セ・パ交流戦の最後の連戦。ホームに迎えるのは、東京ヤクルトスワローズです。そこで、
4.98というリーグワーストの防御率でありながら、破壊力抜群の “いてまえ打線” が前年最下位のチームをリーグ優勝に導いた2001年をイメージして試合は行われます。日本シリーズで対戦し、悲願の日本一を前に立ちはだかったスワローズを相手に…。


 話は、その前に戻ります。
リーグ優勝を決めた2001年9月26日。私は、当時担当していたラジオ大阪の 「近鉄バファローズナイター」 のパーソナリティとして、大阪ドームにいました。
日本プロ野球史上初の “代打逆転サヨナラ満塁ホームラン” による優勝決定のシーンは、グラウンドレベルのリポーター席の、ほんの目の前で起こりました。

 当日のWeb日記のテキストが出てきたので、今日は再掲します。



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 12年ぶりのリーグ優勝まであと1勝と迫ったその日、バファローズの優勝をこの目に焼き付けようと、多くの人がそれぞれの思いを胸に駆けつけました。

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 応援団長 (番組のパーソナリティ) に就任して2年目。オープン戦は2勝しかできず、ほとんどのプロ野球解説者が 「最下位予想」 の烙印を押したチームが、今、こうして優勝へ王手をかけている…。


 とても1年の出来事じゃないような不思議な気持ちを抱きつつ、私は球場入りしました。


 

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  この日の実況は、ラジオ大阪の “猛牛アナ” こと、松本恵治アナウンサー。長いキャリアと鋭い分析力で、きめ細やかな、ダイナミックな実況を届けてくれます。合い間に聞かせてくれる解説者とのトークは、笑いのツボをくすぐられるものも多く、近鉄戦の中継内容は他の追随を許しません。野球ファンがじっくり楽しめる実況。それが、松本アナの実況なのです。

 そして、左にいらっしゃるのが、スポーツ紙の解説者で唯一、今年の順位予想でバファローズを “1位” に挙げられた、佐藤道郎さん。理由を伺うと、「消去法で考えて…」 などと、スポーツ報知の解説でもおなじみの鋭い切り口で解説して下さいました。

 …この二人が、あの歴史的な瞬間をオンエアーしたのです。



18:00
 「いよいよプレーボール。外は平静、中は熱狂…」

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 試合が始まりました。この日は早い段階から 「当日券完売」 のニュースが流れていたせいもあってか、大阪ドームをグルッととり囲むような長蛇の列はありませんでした。(昼間は、自由席のチケットを持った人たちが、少しでもいい席に座れるようにとかなり並んでいたようですが…。)


 そして、ドームの中を見渡すと、ほぼ360度バファローズファンという珍しい現象で、「今までどこに隠れとったんや? 近鉄ファン」と、私は思いながらあちこちネタを拾いながら動きました。


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 写真は、1回の裏・先制のチャンスに、バッター・中村紀洋選手というところで盛り上がる、ライトスタンドの応援風景です。

 試合は、優勝へのプレッシャーと、オリックスのルーキー・北川投手の変則的な投球に翻弄される形で、初回、中村選手のサードゴロの間に1点を取って以来、ゼロ行進。
 一方のオリックスは、近鉄の守備の乱れに乗じるなどして着々と点を重ねていく展開…。

 近鉄は、川口選手のソロホームランで2−4と、2点差に迫るものの、9回の表にオリックス・相川選手に痛恨のソロホームランを浴びて2−5。差が3点と広がり、残すイニングは9回の裏だけ。スタンドの誰もが、「今日の胴上げはないかも」 と思っていたようです。



 そのムードを払拭したのが近鉄・吉岡選手でした。

 2つのエラーで相手に点を許した男は、その裏のトップバッターとして反撃の口火を切るレフト前ヒット。“逆転の近鉄” が今夜もやってくれるのか…という淡い期待を濃くしたのが、続く川口選手のライト線への2塁打。ノーアウト2塁・3塁となって、次の益田選手がフォアボールを選び満塁に。

 ベンチ横のリポート席で固唾を飲んで戦況を見ていた私は、たまらずスタンドへ上がると、いつもテンションの高い私が気後れしてしまうほどのムード。


  これは何かが起きるぞと思っていた瞬間、

 「古久保に代わりまして、北川。」

 と、代打を告げるコールがドームの中に響き渡りました。


 北川選手といえば、今年、阪神タイガースから移籍して数々のサヨナラシーンを見せてくれた、勝ち運のある男です。前の試合でも最終回に代打で登場してホームランを放ち、サヨナラ勝ちの “演出” をしました。それを知っている多くのファンからうねりのような歓声が起こる中、ラジオ大阪の中継では、解説の佐藤さんが 「マンガチックだよね。ここで満塁ホームランなんか出たら」 と仰っていました。


 そして、“マンガチック” は、現実のものとなったのです。

 カウント2−1からの球を振り抜き、打球は左中間への大きな当たり。「行けー!」 と絶叫するスタンドの声に後押しされるように、そのボールはスタンドイン! その瞬間、大阪ドームは言葉にならない喜びの声とともに、大きく揺れました。前の試合で “助演男優賞” を取った男が、今夜は “主演男優賞” です。


 阪神時代から 「はーちゃん」 と呼ばれていた、笑顔がトレードマークの北川選手は、その白い歯がいっぱいこぼれる笑顔でベースを一周し、ベンチから飛び出してきた仲間たちの歓喜の渦にもみくちゃになりました。

 代打逆転サヨナラ満塁ホームランによる、優勝決定…。


 何ていう幕切れなんでしょう。

 これが、パ・リーグ野球の究極のおもしろさなんだと、私は改めて実感しました。

 そして、球史に残る名場面に立ち会うことができた喜びをかみしめました。




 グラウンドでは喜びいっぱいの選手たち。

 一方、バックヤードでは職員の皆さんが抱き合っての男泣き。

 12年間、優勝から遠ざかっていた球団を支えてきたいろんな人たちの思いが、今夜、大きな花を咲かせました。球団が一体となって目指した 「闘志をひとつに、栄光へ…」 が、実現したのです。

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 あの日の思い出を胸に、週末の試合に臨みます。もちろん、メーンの場内アナウンサーは村瀬久美子さん。(故・大野博子さんとともに近鉄バファローズの場内放送を担当された、ファンの間では “若い方のお姉さん” と呼ばれていた方です。) 私は横でサポートしながらの2日間です。よろしくお付き合い下さい。


posted by holyyell at 00:54| Comment(0) | お仕事がらみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする