2016年10月21日

朝のドキュメント

通勤の新快速は
大阪を出発して数分、
尼崎のホームに差し掛かった時だった。

「ドスン。」

床に倒れ込む長身の男性の振動が
足まで伝ってきた。

3メートル向こうの扉のそばで倒れた
スーツ姿の中年男性は動かない。

脳障害か?

心筋梗塞か?

すわ、そばにいた乗客たちが囲む。
私も立ち上がって様子を伺う。

車内のSOSボタンを押して
乗務員に連絡を取らねばと思うが、
人垣の向こうにある。

すると、
ボタンの近くにいた女性がそれを押して
列車は緊急停止。
女性が車掌に状況を説明した。

ほどなく、停止を説明する放送が車内へなされた。
この間に、倒れた男性は気がついたが
顔色は悪い。
「貧血です。」と言った声は申し訳なさそうで、
こちらもいたたまれなかった。
本人も不本意だろう。

列車は
駅のホームに半分到達したままストップしていたため
正規の停止位置まで徐行して
駅に停車する旨の放送が流れ、
ゆるゆると進み、停止。

ホームの車両位置には、
車掌から情報指令を通じて連絡を受けた
尼崎駅の職員が救護をすべく待機していた。
もちろん、車いすも携えている。

SOSボタンの作動からわずか3分。
迅速な対応に驚かされる。

「急病人の発生」という事案は
多くの乗客を運ぶJRでは日常的なことで
そつなく動けている…ということもあるのだろうが、
判断の遅れはダイヤの乱れに直結する中
的確な行動を見せていたのはさすがだった。

駅員が「どなたですか?」と確認しながら乗り込んできて、
周りの乗客が促すと、男性は
「大丈夫です。このまま乗っていきます」と言う。
その言葉を聞いた駅員は、無線で「継続乗車」と伝えて
尼崎からの乗客が乗り込み、列車は発車。

男性は座席に座り、落ち着きを取り戻していくが、
心配した周りの乗客が話しかけ、
行先や今の状況を聞きながら列車は進む。
どうやら、三ノ宮で降りるらしい。

すると、中年の女性が近づき
しゃがんだ姿勢で男性を見上げながら話しかけている。
その話しぶりから
女性は保健関係の方のようで、
男性が下車する際に付き添うといった提案をしていた。

列車は芦屋に停車後、およそ4分遅れて三ノ宮に到着。
女性は腕を貸し、
そばの男性客も体を支えながら、
車内で倒れた男性はホームへ降りて行った。



朝の通勤電車は
やもするとイライラした空気に包まれがちだ。

しかし、きょうの4号車は
「おたがいさま」の空気が支配し、
誰彼なしに、男性のために動いていた。
それが、とても後味の良い結果をもたらした。
結局、私は何の役にも立たなかったが…。


そして、新快速電車は走り続ける。

posted by holyyell at 00:07| 大阪 ☁| Comment(0) | 日頃の行い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする